オールドヤマハピアノ調整 うみそらサロンへ
昨日は古い年代物のヤマハグランドピアノを調整してました。
製造番号は五桁の90000番台。1950年代のピアノですから、60年ほど経ってます。
もっと古いピアノはもちろんありますが、これくらいになるともうオールドと言えるのではないでしょうか。
1950年~1959年(昭和25年~昭和34年) の時代背景は
1950年代は、冷戦構造の固定した時代として位置づけられる。旧枢軸国を含む西側諸国では、経済が急速に復興し、1920年代と同様の消費生活が行われるようになった。都市近郊には郊外住宅が発達した。政治的・文化的にはやや保守化し、一部の人権拡大の要求は軽視された。こうした保守的な傾向は1960年代の対抗文化の爆発的広がりという反動に結びつく。
また東西ブロックの競争が激しくなり、軍拡競争、宇宙開発競争、赤狩り(マッカーシズム)、朝鮮戦争が起こった。この緊張は政治的な保守化の傾向につながった。
テレビの本放送がスタート(1953年)
昭和の大合併(1953年~1959年)
横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市が政令指定都市に移行(1956年)
売春防止法(1956年)
メートル法実施(1959年)
東京タワー完成(1958年)
伊勢湾台風(1959年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/1950%E5%B9%B4%E4%BB%A3
これくらいになると現在のピアノとは細かい点で違いが見られます。
国産のピアノが安定して普及し出し、材質や設計の面でも洗練されある意味完成型のピアノと言えます。




一日がかりの作業でお掃除から始まり、アクションの調整をひとつひとつ手をいれていきます。






まずはバラバラにして奥のほうに入り込んでいるほこりや汚れを取り除いていきます。
これらが残っているとアクションの動きに影響を与えることがあるので、キレイキレイに。
年数経っているため汚れが激しいですが、そりがなければOKです。

次に金属部の磨き作業です。
弦やピンなど音や動きに関係する箇所を中心に磨きます。

鍵盤についているキャプスタンも磨きます。



鍵盤を取るとバランスピンが出てきます。
この鍵盤を支えているバランスピンは88本ありひとつひとつ磨くのはなかなか骨が折れます。


同様にフロントピンも88本磨いていきます。

この作業は基本の大事な部分で、他の調整ができていてもこれができてないとタッチの具合がしっくりこなかったりします。ここの錆が激しいとなかなか厳しいのです・・ 今回はピカピカになりました。
ハンマー関係の調整なども細かくありますが、今回は削らなかったためざっと合わせ、鍵盤もキレイにして動きのかたいのを処理して取り付けて高さを揃えます。


いつもはこの前にベディング調整なるものをするのですが、このピアノには付いていません。

ピアノも日々進化したりしてます。不要なものは取り外されたりもして外見からはわかりづらい部分で少しずつ変化してるのです。
高さを調整する前にハンマーの弦からの打弦距離を調整します。

高さを揃えていきます。後の調整に影響を与える大事な調整です。これによってタッチ感が様々に変わってきます。
鍵盤の高さ調整は鍵盤下にある紙パンチングを入れたり抜いたりして揃えていきます。
88鍵盤の高さが揃っていないと均質なタッチを得ることが難しくなります。

この0.05mmの紙パンチングを下の鍵盤下の隙間に入れていきます。

次に鍵盤の深さ調整。
こちらは手前のフロントピンにあるパンチングの厚さを変えて鍵盤の沈む深さを調整します。


ジャックと呼ばれる突き上げ部品の調整です。前後上下を揃えていきます。



すべての工程がそれぞれ88個なのでほんとに手間かかります。
スプリングの調整です。

このピアノのアクションはシングルスプリングのシュワンダー型と呼ばれるタイプで現在出回っている主流のものとは形状が異なります。レペティションレバーを支えるスプリングがひとつです。現在主流のヘルツ式はダブルスプリングです。
このシュワンダー型のほうが軽快なタッチです。これはこれで弾きやすく好きです。モーツァルトの楽曲等、軽快な曲に合いそうです。

ドロップスクリューも形状が違います。ジャックの上下もいつものものでなくマイナスドライバーで回せるネジです。


全体的にはこちらのアクションのが調整は楽です。慣れもあるでしょうが単純に見て手間はかかりません。
ダンパーやタッチの微調整なども済ませ、整音をしオペはひとまず終了です。
あとは移動先の現地で調律と微調整です。


側板の模様が特徴ありきれいです。

センターレールが木製なのも今は見られないものです。


このピアノの納入先はうみそらサロンに決まっています。
持ち主さんのたっての希望もありサロンのほうへ決まったのです。オーナーのえみさんも突然のお話にいろいろとやりくりが大変だったとのことですが、 なんとか話がまとまりよかったです。
名古屋の中心で古くからのお付き合いのおふたりとのことで私には立ち入れない歴史があります。
でも少しでもその想いを汲み取りいい方向へ行けばと思っていたので、お互いの喜ぶ顔が見れてなによりです。
歴史や想いの刻まれたオールドヤマハピアノ。これからもみなに愛され力強い音色を奏でてくれるものと思います。
サロンは2台ピアノになったので本格的なレッスン用にも使えそうです。
この動画のスーパーレッスンのように。それはやりすぎかな?!

♪------------------------------
ピアノ調律は
サラピアノチューニングオフィス
www.sarapiano.com
-------------------------------♪
製造番号は五桁の90000番台。1950年代のピアノですから、60年ほど経ってます。
もっと古いピアノはもちろんありますが、これくらいになるともうオールドと言えるのではないでしょうか。
1950年~1959年(昭和25年~昭和34年) の時代背景は
1950年代は、冷戦構造の固定した時代として位置づけられる。旧枢軸国を含む西側諸国では、経済が急速に復興し、1920年代と同様の消費生活が行われるようになった。都市近郊には郊外住宅が発達した。政治的・文化的にはやや保守化し、一部の人権拡大の要求は軽視された。こうした保守的な傾向は1960年代の対抗文化の爆発的広がりという反動に結びつく。
また東西ブロックの競争が激しくなり、軍拡競争、宇宙開発競争、赤狩り(マッカーシズム)、朝鮮戦争が起こった。この緊張は政治的な保守化の傾向につながった。
テレビの本放送がスタート(1953年)
昭和の大合併(1953年~1959年)
横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市が政令指定都市に移行(1956年)
売春防止法(1956年)
メートル法実施(1959年)
東京タワー完成(1958年)
伊勢湾台風(1959年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/1950%E5%B9%B4%E4%BB%A3
これくらいになると現在のピアノとは細かい点で違いが見られます。
国産のピアノが安定して普及し出し、材質や設計の面でも洗練されある意味完成型のピアノと言えます。




一日がかりの作業でお掃除から始まり、アクションの調整をひとつひとつ手をいれていきます。






まずはバラバラにして奥のほうに入り込んでいるほこりや汚れを取り除いていきます。
これらが残っているとアクションの動きに影響を与えることがあるので、キレイキレイに。
年数経っているため汚れが激しいですが、そりがなければOKです。

次に金属部の磨き作業です。
弦やピンなど音や動きに関係する箇所を中心に磨きます。

鍵盤についているキャプスタンも磨きます。



鍵盤を取るとバランスピンが出てきます。
この鍵盤を支えているバランスピンは88本ありひとつひとつ磨くのはなかなか骨が折れます。


同様にフロントピンも88本磨いていきます。

この作業は基本の大事な部分で、他の調整ができていてもこれができてないとタッチの具合がしっくりこなかったりします。ここの錆が激しいとなかなか厳しいのです・・ 今回はピカピカになりました。
ハンマー関係の調整なども細かくありますが、今回は削らなかったためざっと合わせ、鍵盤もキレイにして動きのかたいのを処理して取り付けて高さを揃えます。


いつもはこの前にベディング調整なるものをするのですが、このピアノには付いていません。

ピアノも日々進化したりしてます。不要なものは取り外されたりもして外見からはわかりづらい部分で少しずつ変化してるのです。
高さを調整する前にハンマーの弦からの打弦距離を調整します。

高さを揃えていきます。後の調整に影響を与える大事な調整です。これによってタッチ感が様々に変わってきます。
鍵盤の高さ調整は鍵盤下にある紙パンチングを入れたり抜いたりして揃えていきます。
88鍵盤の高さが揃っていないと均質なタッチを得ることが難しくなります。

この0.05mmの紙パンチングを下の鍵盤下の隙間に入れていきます。

次に鍵盤の深さ調整。
こちらは手前のフロントピンにあるパンチングの厚さを変えて鍵盤の沈む深さを調整します。


ジャックと呼ばれる突き上げ部品の調整です。前後上下を揃えていきます。



すべての工程がそれぞれ88個なのでほんとに手間かかります。
スプリングの調整です。

このピアノのアクションはシングルスプリングのシュワンダー型と呼ばれるタイプで現在出回っている主流のものとは形状が異なります。レペティションレバーを支えるスプリングがひとつです。現在主流のヘルツ式はダブルスプリングです。
このシュワンダー型のほうが軽快なタッチです。これはこれで弾きやすく好きです。モーツァルトの楽曲等、軽快な曲に合いそうです。

ドロップスクリューも形状が違います。ジャックの上下もいつものものでなくマイナスドライバーで回せるネジです。


全体的にはこちらのアクションのが調整は楽です。慣れもあるでしょうが単純に見て手間はかかりません。
ダンパーやタッチの微調整なども済ませ、整音をしオペはひとまず終了です。
あとは移動先の現地で調律と微調整です。


側板の模様が特徴ありきれいです。

センターレールが木製なのも今は見られないものです。


このピアノの納入先はうみそらサロンに決まっています。
持ち主さんのたっての希望もありサロンのほうへ決まったのです。オーナーのえみさんも突然のお話にいろいろとやりくりが大変だったとのことですが、 なんとか話がまとまりよかったです。
名古屋の中心で古くからのお付き合いのおふたりとのことで私には立ち入れない歴史があります。
でも少しでもその想いを汲み取りいい方向へ行けばと思っていたので、お互いの喜ぶ顔が見れてなによりです。
歴史や想いの刻まれたオールドヤマハピアノ。これからもみなに愛され力強い音色を奏でてくれるものと思います。
サロンは2台ピアノになったので本格的なレッスン用にも使えそうです。
この動画のスーパーレッスンのように。それはやりすぎかな?!

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Re: オールドヤマハピアノ調整 うみそらサロンへ
さらちゃん今回は本当に色々と配慮頂き 感謝してもしきれないくらいです。
持ち主の方は勿論ですが 無理なお願いを聞いて下さって さらちゃんが この話をじっくりと進めて下さり 良い方向に向かう事が出来 本当に感謝してます。
今 考えると このために サロンを広くするべきだったのかな??とも思います。
なんでも自分の都合のいいように考える人です。
必ず 皆 喜んでくれると思います。こんなに手間掛けてくれて本当に有り難うございました。大切に使わせて頂きます。
Re: Re: オールドヤマハピアノ調整 うみそらサロンへ
いえ、こちらこそこんないい機会に恵まれて感謝してます。人との縁やつながりの大切さを改めて実感しました。この時代まず普通では出会わないようなピアノですから。
グランドピアノのような大きいものは周りとの関係やいろんな考えなどあり、日々悩ませてしまって心苦しかったですが、ほんとにいい方向へ行きほっとしてます。
前のままのサロンではさすがに厳しかったけれど、ちゃんと準備ができているものなんですね。流れのままにしたがっていけばいい結果にいくと思います。
みんなの喜んでくれる姿をイメージできたえみさんだからできたことだと思います(^^)
そのためにまたしっかりと管理していきますね!
- 2010.06.08 (火) 20:30
- URL
- チョピン
- [ edit ]
ぼくのと同じですね!
サラさん♪♪♪G2と聞いて、驚きました!
ぼくのと同じですね!
でも、製造年代が違うかなあ?
サラさんの作業された写真を見て、
「ぼくのピアノも、分解したらこうなるんだなあ~」
と、とっても興味深かったです。
そしてさすがに専門家、ねじやスプリングの特徴までお分かりなんですね!
やっぱりプロの方は凄いです!
Re: ぼくのと同じですね!
チョピンさん、そうですG2ですよ。製造年代が違うので中の部品が少し違いますが基本的なところは一緒です!ピアノってほんとにたくさんの部品が使われていて分解していくとおもしろいです。そのひとつひとつの細かな調整によりタッチや音が変化するのですから、奥深いです。
まだまだ勉強してまた記事にしますね!!
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プロフィール
Author:Masayuki Saraie
SARA PIANO
珈琲とピアノと猫をこよなく愛する
ピアノ調律師 更家雅之
楽器が求め、演奏者が求めるベストな状態へ
音の職人、更家雅之の日記や想い
ピアノや音楽、日常を通して出会う人たちとの 交流から日々考えさせられ思ったことを、日記を中心に更新中。
音楽はどんなジャンルでも大好きで聴くこと演奏することが趣味
音楽と歩んできた人生、辛い時、楽しい時、そばにはいつも音楽がありました。音楽によって救われた時期も。
そしてピアノを弾くと心が落ち着きます。
近年、調律や音楽が心に及ぼす影響を研究中。
音楽は心の世界への扉 、そして心そのもの。
ピアノ、音楽を通してこの時代に”心豊かに生きる”を実践しています。
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