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ピアノの狂った音に対してのアプローチ

2019.10.18 Fri

一日目のお仕事を終えてお茶の水の大野先生宅へお邪魔させていただきました。

レッスン室にはスタニスラフブーニンゆかりの素晴らしい響きのスタインウェイのフルコンサートグランドがあります。

ちょうどレッスン中を見学させていただく機会に恵まれ、先生の鋭い指導には感心するばかりでしたが、特にピアノの音色に対しての指導は大変興味深いものがありました。

ピアノの音色の変化についてどうアプローチしていくのか。ピアノの音は調律後に少しずつ狂っていくので万全な状態がずっと続くわけではありません。
調律師の観点からみると調律直後が一番ベストであとはダメになっていくと言うの技術的な観点からの見方です。

ですが、大野先生はじめ卓越した耳を持っている演奏家のかたがたは必ずしもそうは思っていない。
たしかに調律次第では調律直後がベストですが、調律後日数が経ったピアノもまた違う聴きかたができるとの事。

いわくほどよく狂ってきたピアノはそれはそれで音色が作りやすいと。
倍音の観点から感覚的にそれは理解できるのですがいざ自分が弾く立場になるとそれができないので頭にはありませんでした。

それにいつも調律直後のピアノを弾く事が多いので弾き慣れていないと言う事もあります。耳が敏感なのですこしでも狂っていると気になりこれはダメだと諦めてしまいます。

しかし今回レッスンを聴講して、ピアニストが置かれている立場、それは刻々と変化するピアノに対応していかなければいけない、そうでないと良いパフォーマンスを発揮できないと言うことを思い知らされました。
どんなピアノでも音色を作れる能力、これはかなりレベルの高い話です。

音の狂いが不思議と気にならない演奏があることを若い頃から不思議に思っていたのですが、その正体がなんなのか、、
大野メソッドの本質に触れるところであり、それがわかってきたことは望外の喜びです。

レッスンの生徒さんが変わると音色が変わるのはもちろんの事、その弾き方によってもその後の音の変化に影響してくる。大野先生が一度座りピアノを弾いていわゆる楽器を起こすように弾くと倍音が豊かになるようになったのも驚きでした。

その他湿度によっても微妙に変化するのがスタインウェイの持ち味でもありまさに生きて呼吸をしている事が実感できます。

ピアノを弾く事は生き物を相手にしていると言う認識が必要であり、それは会話のごとく臨機応変、即興の世界。一瞬一瞬のその時だけのやりとりでありそのためには耳に全神経を集中させることが必要になる。そして確かな耳を持つ事が必要になる。

音色ありきで音楽を捉える事が確実に作品を仕上げる近道であり、人の心に訴えかける事ができる音楽だと思います。

逆に言うと作品に対しての知識はあり楽譜を読み解いていてもそれが音に出ていなかったら意味をなさない、人の心に訴える事には繋がりにくいと思う。
気持ちだけでこうだと腕を振りかざして弾いたとしても目をつむり聴いたら何も変わっていないと言うことはよくあること。

それをいかにして音色に反映させるのか、その技術があってこそより音楽的に弾ける事に繋がり、演奏者のひとりよがりな気持ちだけでは終わらない演奏になる。

音色にこだわる事がいかに重要か、そしてそういったところをとことんこだわりレッスンしているところが他にあるだろうか。

いつも新しい見方に気付かせてもらえる大野メソッドは常に果てがない、深淵にアプローチしています。

その昔ホロヴィッツの生演奏を東京で聴いたと言う大野先生、その倍音で作る音楽と言ったら凄まじいものがあったと。

もうホロヴィッツの生演奏を聴く事は叶わない、録音では聴くことができない世界がそこにはある。
ようは生演奏を聴いた事がないことには実際にはどうなのかを判断する事が困難。にも関わらずあのピアニストがどうだこうだと僕らは言っている。本物を聴く事をなしに表面だけで判断しているに過ぎない。

ホロヴィッツの録音を聞いて感じていた物足りなさはここにあったのかと、答え合わせができた。

これは狂いの生じたピアノで作った響きを録音したとしてもそれが再現できずにいまいちだと思うかもしれないと言うことと同義。

調律として狂っているピアノでも演奏家によってはそうは聞こえないようになってしまう秘密はそこにある。

どうしても名の通ったかたや録音されているものを良しとして聴いてしまうけれど、もう生で聴けない演奏家に留まる事なく実際に目の前で聴ける演奏に耳を傾ける事のほうが良いと思う。

現代のピアニストでも素晴らしいかたはたくさんいる。
ピアノ本体、ピアノの状態、弾く環境、調律、等それらとの演奏家とのハーモニー、アコースティック音楽とはその一瞬一瞬の奇跡が生み出すその場限りの生きているものなんだと改めて思わされました。


追記
なぜかあまちゃんのDVDを見ることになりついつい見入ってしまいました。そこにも先生のメッセージが込められていたような。。笑


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