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心のうち・・・

2012.06.07 Thu

今日は印象に残ることがあったので日記を書こうと思います。


今回で3年目くらいになるお客さんなのですが、いつも調律後に隣にある喫茶店で珈琲をごちそうしてくれたりとよくしてくださるかたなのです。

ピアノは大事にされている様子で、毎年きれいにされていました。


しかし今年はあまり弾かれていないとのことを調律前にお聞きし、そうは言ってもけっこう弾ける子だしなあと思っていたのですがほんとに弾かれていないようなほこりがたまっているようなピアノの様子。


弾かれてはいないと言っても、今年は例年に比べ乾燥している日が多いため狂いもそれなりには出ていたものですからしっかり音を合わせお掃除やタッチの調整もしました。



いつものように作業が終了し少しお話をと思いピアノの状態などを説明していたのですが、なかなかお話がきれない。お子さんのお話などをしていたのですが、受験生と言うこともありここ半年くらいはほとんど弾いていないと話されていました。

なるほど、ほんとに弾いていなかったのだと思い納得したのですがどうも音楽の道に進むことも断念したのだとわかってきました。

去年は進路をどうしようか迷っているとおっしゃっていたのですが結論が出たようです。


もともと音楽とは縁がなかったご家庭らしく、娘さんが2人いるので習わせたと言うことでした。

特にお父さんはいろいろご苦労されてきて、ピアノはご自分のお仕事とはかけ離れた世界のものと言うイメージしかなかったらしく、自分の家の中からピアノの音色が聴こえてくるなんて信じられないと娘さんがいないところで話あっていたそうです。


お母さんはお話をしているうちに才能がある子はもっといるから、とか将来音楽で食べていくのは難しいから、とかマイナスなことばかり言って自分に言い聞かせているようでした。

僕も音楽で食べていく苦労は見てきているので堅実な道を選ばれてよかったと、納得してもらえるような応対をしていました。



そのうち金銭面とかの話になり、娘さん2人とも奨学金で大学に行かせるような状態でつらい思いさせてますと。

なんとなくああそうなのかと理解したのですが、少し残念な気持ちにもなりました。


たしかに豪華なおうちでもないですし贅沢をしているような感じではなくどちらかと言うと質素な感じです。

このご時勢で旦那さんのお仕事も大変らしく、つらい胸のうちを話されていました。



そして、あまり弾かなくなったし調律もどうしようかと思っていたんですと・・


たまにあるのですが、いつもの話の展開できたかー(涙 と思いました。

しょうがないですよね、と人のよい私はいつものごとくいい人ぶろうとしたのですが、


急に泣き出してしまわれて・・


娘に調律のことを言ったら 

「お母さん、調律だけはやって。お金は働いてあとで返すから。」

と返ってきたとのこと。


お母さん、こんな思いをさせて申し訳ないと思ったのでしょうか、そのことを思い出してボロボロボロボロ涙を流されたのです。

私は言葉につまってしまい、

毎年しっかりと調整させていただいてますから、ずっと長く使っていただける作業を毎回していますから、安心してください。

と言うのがやっとでした。



あとから考えると、あのとき、もっと気の効いた言葉をかけてあげられたらとか思いました。

音楽の道に進むよりもそう言ったことが言える娘さんを育てられたのは素晴らしいことです。とか


でもお母さんの夢でもあった音楽の道をあきらめざるを得なかったことは事実であるので、それを言うのも複雑なことだなと思い直したり・・


もちろん業界にいれば、なにも音大などに行くことが絶対条件だとは思わないのですが何もわからないかたからすれば確かにその道に進むには必須だと思うでしょう。

私も育った家庭が音楽とは縁遠かったので、何もわからずとりあえず調律の学校に行ったし、そのほうが入りとしてはスムーズに行けるんだと思います。

お話のなかでは一応そういったこともお話させていただいたのですが、自分で一から切り開いていくのは厳しい道であることは間違いないのは事実です。



自分は裕福ではなかったけれどひと通りやりたいことはやらせてもらった家庭に育ちました。

今の日本では特に僕らの世代ではそういう人が多数なんだと思います。


でも必ずしもそういう人ばかりではないし、これからはもっと厳しくなるかもしれないし、自分の先の世代はもっと厳しかっただろうし・・

TVでこないだ見たのですが、中国の貧しい農村の女の子が若いうちから都会の工場に働きに出て必死で働いたお金を田舎の親に仕送りをすると言うドキュメント。

一年に一回の春節には田舎に帰り親や兄弟の顔を見たいのですが、お金がなく帰れない年もある。

会社の業績がよくなりボーナスが出たからようやく3年ぶりに帰ることができたとか。


そういった状態が人間にとってよいことであるか悪いことであるかとか言う議論は抜きにして、こういう環境に置かれた人たちは心が強くなり、磨かれてきれいなんだろうと思う。

もちろんそういった環境のなかで横道にそれたりしてドロップアウトするような人もいるだろう。

でも、なに不自由なく育った人間に人の痛みや気持ちがわかるだろうか。



ピアノの親子とや中国の貧しい農村の子に今の日本人が忘れてしまった何かが感じられたのです。


音楽の道には進めなかったかもしれないけど必ず立派な人間になっていくはずです。



自分はピアノを通してそのようなドラマが生まれたこと、関われたことが嬉しかった。

最近は電話をしても申し訳ない感じで断られたり、ときには冷たい言葉で断られたり、と言ったことが増えてきています。それは私だけでなく外まわりの普通の調律師であればみなさん悩んでおられることと思います。

特に調律は形が見えなく、成果が人に伝わりずらいものなので一生懸命やっても報われない部分も多いです。

それだから何か変わったことをしたりコンサート調律の専門を目指したり、なにか安定したものを持ちたいと思うのが常です。


でも今回のようなお気持ちで調律をオーダーしてくださるお客様もみえます。 

それに応えるためには毎回毎瞬手を抜けないし、金額に見合った仕事をするのはもちろんのこと、それ以上を目指さないとなりません。

そのなかで今回のように事情を知ることにより報われることもあるわけです。


一見意義を見出せないような仕事も、とても意義のあることをしていることがあります。

我々は見えないところでとても意義のあることをしてると言う自信を持てばいいと思います。


私は現場を離れずどこまで行っても評価されずらい”調律”と言うものをこれからも続けていき人の心をつなげるお手伝いができればと思っています。




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コメント

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この記事 読ませていただいて 昔の自分の育った家の事 色々と思い出しました。
この方のようにピアノは有ったけれど 私にはピアノさえ無かった、でも音高は目指してました。
ピアノはなくても 必死で勉強したし 苦しい中でピアノレッスン行かせてもらって感謝しています。
今はこの時の思いがとてもあります。
この方も学校は違った所に進まれても 先にはきっと 音楽にたずさって行かれると思います。 すてきなお母様です!!  
お嬢さんもきっと優しい方になられます!!

*

eさん、ほんとにご苦労されてきたのですね。僕らはなんでも物がある時代に生まれてきたので不自由なく育ってきました。しかし昔はピアノもある家は限られていたのですよね。
そんななかピアノもないのに練習されていたなんてeさんは音楽への想いが人一倍強かったのが伝わってきます。そのような想いがこもった音色、僕がいい環境でピアノをいくら練習しても出せないと思ってます。

人は苦労したぶん心がきれいになっていく。この娘さんもeさんのように心優しい魅力的な人になっていくこと僕には見えます(^^)

*

 という Kategorie に興味をもって読ませていただきました。

本当に心に ジーン と来る内容でした。

やはり, こういう記事を読むと, 自分の子どもの頃を, つい思い出してしまいますね。
そして, こちらのお母さまと娘さんの事を思うと胸が痛む思いがしました。

私の場合は・・
最初はYAMAHAの個人っレッスンに通っていましたが
妹も習い始めた事もあって
途中から自宅の方に, 先生に来ていただくような形になりました。

そこまでは順調に・・

ところが, 中3で, 受験の事を意識されたのか・・

ある日, 担任の先生に

まだピアノをやってるのか?

みたいな事を言われると

あぁ, そうなんだ・・ 止めた方が良いのか・・

何とも素直に, 安易に?考えて, ピアノを中断することに。

ところが, いざ高校に進学すると, クラスにピアノを習っていた子が 7人 もいて, 私は慌ててしまいました。

すぐさま, 母に また続けて良い?

と聞くと, 勿論いいよ!という笑顔のヽ(*^^*)ノの返事をもらい継続

そして・・ やはり将来の進路選択を考えたとき・・ 
私は現文が好きでしたので, 国語の教師になりたいな・・
と思っていましたが

だめだ・・ ピアノは捨てられない!

と, 思い音楽の道を選んだわけです。

偶々母の出会った,ピアノの先生の紹介から, 大学の教授宅にホームレッスンに通うことになり
日曜の度に, 電車に乗って通いました。

そして何とかその道へ・・

と言っても, 所謂ピアニストという, highレヴェル職種には就かず
教職に進んだわけです。手堅く・・ という思いがありました。
とはいえ, 音楽教員の試験もそれなりに難関でしたが
運良くクリアできました。

思えば・・ こんな私の過去を思えば, 私など非常にスムーズに行ったうちに入るのですね。
諸事情が重なり, 行きたい道にまっすぐ行ける事は少ないもの・・

当時は, それでも悩んだりそれなりに頑張っていたように思いますが・・
やはり, こちらの記事のお母さまや, 健気な娘さんの事を思うと, 人生って, どこでどういう風に決まっていくのか・・
と, 不思議な気持ちになります。

実は, 1年の高校のクラスに, 偶々 ピアノを習っていた子が集中していただけなのです。後で知ったのですが・・

あの時, そういうクラスに入らなかったら, 私は直ぐにはピアノを復活させていたかどうか・・
現文教師になる道一本に絞っていたかもしれません。

時々そんな風に思います。それくらい現文が好きでしたから。


この娘さんは・・
今頃どんな女性に成長しているでしょうか・・

どこにいても, きっと ピアノを身近に 幸せになっていることでしょうね!v-432

*

Okamotoさん、あたたかなコメントをありがとうございます。

私自身久しぶりにこの記事を読んでいろいろなことを想い出しました。改めて自分の仕事に対する気持ちを確認できました。最近は日々に追われこのような日記を書くことも少なくなっています。忙しいとは心を亡くすと書きますがその言葉を実感する日々です。

人は人生の中で多くの人と出会い、影響を受けて進む道が決まってくるのだと思います。Okamotoさんが音楽の道に導かれたのも音楽への想いが現実となり、それを支えてくれた周りがあってのことかと感じます。きっとそういう運命のもとにいると言うことなのかと自分自身の体験を通しても思います。
あきらめようとした時に引き上げてくれる人が現れたり、きっとそういうことで人の人生の方向性ができるのかなと。

この記事の娘さんの現在は残念なことにわかりません・・ 
今年は調律へお伺いすることが叶いませんでした。とても厳しい時代になっているので心の部分ではカバーできないことがあるのも事実だと感じてます。
でもきっとそんな心を失いがちな社会にとって必要となる人に成っているのだとの確信があります(^^

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